株式会社吉村印刷

印刷を楽しむブログ

活版印刷を深掘り④ ~文選は速く正確に~

これまで3回にわたって活版印刷の文選について掘り下げてきました。4回目の今回は、文選作業(活字を拾っていく作業)において、正確さを追求し、スピードを上げるため、吉村印刷内でどのような取り組みを行っていたかについて振り返ってみました。

吉村印刷では、新聞の組み版が多かったことから、新聞一段分(当時は6.3ポイントの活字は15字、8ポイントの活字なら12字分)が入るアルミ製のステッキ(文選箱)を使っていました。


新聞の場合、ステッキに入ったままで校正(棒ゲラ校正)を見て、赤字があればステッキの中で差し替えてから組み版をしていました。この方法の良いところは、組み上げてからのやり替えが少なくてすむことです。この方式を応用して冊子・書籍もステッキを使って採字作業をするようになりました。

ステッキを採用する以前、書籍などを組む際は、ゲラ箱と呼ばれる木の箱に、※セッテンを入れ、活字を拾っていました。
※セッテン(setting rule=植字定規)…活字の滑りをよくする定規のような物


ゲラ箱に半分ぐらい活字を拾うととても重くて、箱を支える手が痛くなってきます。そのため、半分ずつ拾って移し替えるなど、とても面倒でした。それを解消したのが「ステッキ拾い」でした。

さらに「ゲラ箱方式」では、組み版をする植字工が、拾った活字と原稿を照らし合わせ、一行分の活字を並べては、インテル(行間のアキを調整するもの)を入れ、コミ(余白に入れる材料)を入れたりしていたので時間がかかっていました。

また、すべて組み上がってから初めて校正を見ることになるので、脱字や脱行があったりすると何ページにもわたって活字を繰って移動させていく必要があり、とても大変でした。「ステッキ拾い」にして、棒ゲラの状態で校正をすることで組のスピードも上がり、組んだ後のやり変えも最少限で済むようになりました。

この方式は、新聞組み版を主としている吉村印刷独自のものでした。活版工程においては、文選作業の正確さと採字速度が全体の作業効率に大きく影響していたのです。

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