株式会社吉村印刷

印刷を楽しむブログ

活版印刷を深掘り② ~漢字の配列を覚える~


■文選工は漢字の配列を覚えることが第一

活版印刷の文選において、漢字の配列を覚えることがとても大事でした。

漢字がどの部首から出るのか、それは出張か本場か、どの辺りに納まっているのか、それが分からないことには、すべてのケースを探すことになるので効率が上がりません。いかに速く目的の活字を見つけるかが、すべての工程に影響していました。

部首は旧字体が元になっているので、字によっては「何でこんな部首からこの字が出てくるの?」というようなものもあります。

例えば、尽という字の部首が尸(しかばね)かなと思っても、尸にはなくて皿(さら)のところにあります。
なぜか?
それは旧字体が盡で、皿から出るからです。

与もそうです。
与の旧字体は與と書くため、これは部首としては臼(うす)になります。
画数が少ないので「初めの方かな?」と思って探していると、とんでもなく後の方に出てくるのです。

また「闘構え」と「門構え」の違い、「彳(ぎょうにんべん)」と「行(ゆきがまえ)」の違いなど、学校で習ったときには深く考えなかったことが次々に出てきます。

当時は仕事の傍ら、こうした漢字についての知識もどんどん深めていました。

場所を覚えてしまえば、どんな難しい漢字でも一発で見つけられます。
たとえ字が読めなくても、採字できるのです。文字の形状による差を一瞬で見極め、同時に手が適切な位置に動き、その活字を採字する。そのように採字のプロフェッショナルが素早く活字を拾っていました。

現在の作業環境では、パソコンで簡単に文字をデータにすることができます。文字の法則などややこしいことを知らなくても困りません。しかし、アナログの時代に培ってきた、物事を法則的に見ていくことは、とても重要なことだと感じています。

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